ストーリー
「私はおしまいだ。私は国家を裏切ってはいない。ドイツ人として、自分の義務を果たしたまでだ。あなたが生き延びることがあれば、妻によろしくと伝えてくれ」 ヴィルヘルム・カナリス
彼の諜報機関は、極秘任務の見えない前線における、ヒトラーの「すばらしい兵器」だった。ヒトラー政権の打倒を企てたものが彼と接触し、そして彼が強制収容所で殺害されたことによって、軍部による反抗の象徴となった。ヴィルヘルム・カナリスは、国防軍情報部の部長であり、カムフラージュと騙しの名手であった。
彼のスパイ活動によって、ヒトラーの侵略戦争の準備は、秘密に、そして効果的にすすめられた。秘密警察と協力して活動する一方で、政治的に迫害を受けている者が国外に逃亡するのを助けていた。
ヒトラーの支援者でありながら、ヒトラーに反対する立場をとり続けるには、どうすればよいのだろう?カナリスは、国防軍情報部の部長として愚行にかかわる一方で、ハンス・オシュターやハンス・フォン・ドナニーといった、ヒトラー政権転覆計画で中心的な役割を果たした人物の「守護天使」でもあり続けた。
1944年はじめ、諜報活動の失敗が原因で、既に疑いの目を向けられていたカナリスは、重要でないポストに異動となった。1944年7月20日のヒトラー暗殺計画の失敗後、彼は逮捕され、フロッセンビュルクの強制収容所へと移送された。終戦直前に、親衛隊員によって殺害された。
この映像では、友人やライバルの発言から、カナリスの肖像を描き出している。彼は反抗と従順の狭間で、公然と反抗しようと決心したことはなかった。かつて国防軍情報部でカナリスの部下だった人物や、かつてのライバルであった「国家保安本部」のメンバー、そしてフロッセンビュルクの強制収容所でカナリスの最期を目撃したデンマーク軍人が、カメラの前で語る。そして、カナリスの助けを得て中立国へ脱出したユダヤ人亡命者たちが、その救出の劇的な状況を物語る。